犯罪に対する危機管理
1.企業における危機管理の必要性
危機管理とは、不測の事態に対処するための体制や施策のことを言い、今や企業においては当然必要な検討事項になっています。では、犯罪の防止に関する危機管理はどうでしょう。被害が発生した場合だけでなく、被害の発生を未然に防止するという対策も極めて重要です。
個人でも企業でも、被害に遭ってから犯人が検挙されるより、そもそも犯罪被害に遭わない方が望ましいのは明らかです。実際の被害例を見てみましょう。
【事例】
A社の営業担当者が顧客情報の入ったカバンを車内に置いたまま食事をしていて車上ねらい被害に遭い、顧客情報が流出し、謝罪等に要した経済的被害だけでなく、これまで培ってきた信用が失墜した。この事例のように犯罪被害は経営に大きく影響しますし、経営には直接影響がないように見える場合でも、従業員は企業にとって重要な資産でもあり、従業員が安全で安心して暮らすことが企業の安定にもつながります。しかし、企業も従業員個人も、犯罪が多発していることは知っていても、「自分だけは被害に遭わない」となんとなく思っているのが現状です。
※ひったくりは、単に現金、カバンなどの被害にとどまらず、被害者がPTSD(心的外傷後ストレス障害)になり、外出できなくなることもあるようです。
2.新社会人に必要な防犯対策
この時期企業では、新入社員を迎え、社員教養等が実施されています。では、新入社員に必要な危機管理(防犯対策)とは何でしょう。一番重要なことは、防犯意識を持たせることです。具体的には、企業人として犯罪の被害に遭わないことも重要な責任(仕事)であることを認識させてください。
次に職種に応じた具体的な防犯行動を指示して習慣化させてください。
例えば、車で営業に出る社員に対しては、荷物を置いたまま車を離れないことなど、具体的に説明し、行動が習慣化するまで繰り返し指示してください。また、併せて企業人として、社会に貢献することが、地域・顧客から求められていることも指導してください。
※車上ねらい、部品ねらいが多発していますが、防犯カメラなどの映像によると、犯行時間は、車上ねらいの場合で20秒程度、カーナビ盗難でも1分程度です。
3.具体的な指導方法
- 具体的な指導方法としては、
- 1.新入社員教養時に実施する
- 2.情報管理、交通事故防止などと併せて教養すると効果的です。
- 3.防犯訓練・防犯講話を実施する。新入社員だけの教養ではありませんが、車上ねらい、ひったくり、性犯罪等の防犯訓練・防犯講話を警察と連携して実施する。
犯罪情報を活用する。
県警のホームページやメールマガジン「パトネットあいち」を活用して従業員に指導したり情報を伝達する。県警では、企業向けの犯罪情報を「防犯定期便」として毎月1回、PDFデータで提供しています。企業では社員へ個人メールをするなどして活用いただいています。
※銀行強盗の防犯訓練では、犯人の服装などを行員に聴取しますが、実際の上着が赤色でも、「黒色だった」と答える人もいます。訓練とわかっていてもこのような結果です。やはり日頃の訓練と防犯への意識づけは重要です。
4.CSR活動について
- CSR(企業の社会的責任)貢献活動に対する考え方、範囲については、移り変わると言われていますが、近年では、コンプライアンスにとどまらず、社会活動への関与など、一歩踏み込んだ活動にまで範囲が拡大されているようです。 CSR活動として、ぜひ防犯活動についても目を向けましょう。
- あいち地域安全新県民行動計画
【主体別取組事項(要旨)】
《事業者団体》- 会員、従業員に対し、各種情報伝達、注意喚起、研修会の開催、防犯啓発ツールの作成・配布を実施し、また、現場スタッフを中心に防犯朝礼・研修等による防犯教育を徹底する。
- 会員、従業員の家族に対し、防犯情報の周知や防犯資機材の提供等を推進する。
- 来客等に呼びかけ運動を行うなど、安全安心な商店街づくりを推進する。
- 活用できる様々な広報媒体を使って、県民総ぐるみ運動のスローガンのPRなどの啓発を行う。
- 店舗等地域安全拠点とするセーフティステーション活動を実施する。
- 地域住民、地域団体等と一体となって、防犯意識の高揚のための啓発等に取り組む。
- 県の「安全なまちづくりパートナーシップ制度」に参加し、安全なまちづくり活動を実践する。